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2015/11/1更新

メディア時評

参院選へ向け反政府勢力分裂煽る御用文化人(上)
御用文化人の反政府運動妨害を許すな

浅野 健一
ジャーナリスト
同志社大学大学院社会学研究科博士課程教授(京都地裁で地位確認係争中)

戦争法案を自民党議員の暴力で強行採決してから1カ月がたった10月19日、国会前で戦争法廃止を求める集会があった。戦争法に反対する動きは止まらない。来年の参院選を前に共産党が提案した戦争法廃止を求める国民連合政府構想にも、関心が高まっている。こういう時に必ず出てくるのが、反政府運動に分断を持ち込もうとする文化人、ジャーナリストだ。

テレビコメンテーターの大谷昭宏氏は、月刊「自然と人間」8月号の連載記事で次のように論評している。

《ただしその場合、独立した国家として無防備では国民も不安です。そこをどうするのか、はっきりさせておかなければなりません》《(反対派は)9条とは矛盾しない個別的自衛権の範囲内で、集団的自衛権のような行動が起こせるかの議論を積み重ねる必要がある。こうした議論を整理しながら、日米安保と憲法のあり方を考えるしかない》《そのためには、多くの国民が参加して政策論争ができる、まともな野党の出現が求められます》

大谷氏は安倍政権を批判し、《ファシズム化していく日本の危険性》を指摘し、戦争法案には反対だと表明しているのだが、日米軍事同盟を維持して、日本は憲法の範囲内で軍事力を強化するという選択しかない、と主張している。《独立した国家》が戦後70年もたつのに、いまだに米軍の駐留を認めているのはおかしいと思わないのだろうか。これでは、安倍自公政権の解釈改憲とあまり変わらない。

テレビ各局の情報番組を渡り歩いている文化人が、権力を根底的に批判することはない。適当なことしか言わないからこそ、頻繁に出演できるのだろう。大谷氏はテレビや雑誌で、一般刑事事件報道でも被疑者を犯人視するコメントを繰り返している。この雑誌は、私も時々記事を書いているリベラルな雑誌だが、まともなジャーナリストの出現が求められている。

私たちが進むべき道を明確にしたい。憲法の非戦・平和主義をどうすべきかについて、三つの流れがあると私は思う。@現状の対米隷従、米国の核の傘の下(米軍占領=植民地状態を継続)、A米軍基地撤退、独立国として国軍・徴兵制導入=核武装検討(軍事予算が拡大)、B現行憲法の精神を実現し発展させる非武装中立(自衛隊をサンダーバード的な地震・災害などから市民を守る組織=水島朝穂・早大教授が提言=に解体・再編、世界の反核・非戦のリーダーに)―の選択肢だ。安倍自公政権は、靖国史観で「美しい国」と言いながら米国隷従という矛盾(@とA)を抱えている。

私は、Bの道しかないと確信している。大谷氏は、最初からこの道を排除しているが、護憲=非武装中立こそもっとも現実的な選択である。

参院特別委の審議で、首相や閣僚の答弁が迷走し、立法事実も説明できなくなっていた9月4日、安倍首相は国会をさぼって、大阪まで出かけ、読売テレビの「情報ライブ ミヤネ屋」に緊急生出演したことは、記憶にとどめたい。首相は、6日放送の辛坊治郎氏の「そこまで言って委員会NP」の収録も行った。全国ネットでない番組にわざわざ出て、百地章、加藤清隆、宮家邦彦、竹田恒泰、橋本五郎各氏ら親衛隊に囲まれて上機嫌となり、英気を養った。

首相は「ミヤネ屋」で、「わざわざ大阪まで来ていただきありがとうございます。なぜうちを選ばれたか」という宮根氏の質問に、「森本敏(元防衛相)さんに、この番組に出てちゃんと説明してはどうかと勧められた」と答えた。「海外の情勢、安全保障環境をめぐる状況が激変している。北朝鮮は数百発の弾道ミサイルを持ち、その多くは日本を射程にしていて、それに載せる核兵器を開発しつつある。40年前には、北朝鮮はミサイルを一基も持っていなかった。大きく情勢が変わった」。

中国、北朝鮮の脅威を挙げていることについて、「その国の人には不愉快でしょう」と言い放った。宮根氏が「抑止力が必要というのは分かる」と応じた。春川正明解説委員が「大学で教えていると、安倍さんの考え方が怖いという声もある」と聞くと、「日本は堂々たる民主主義国家で、国民に選ばれた国会議員によって選ばれた首相の私がいる。シビリアンコントロールがある」と答えた。

元NHKの手島龍一氏が「70年談話は一般には役人が書いたと誤解されているが、私たちジャーナリストから見ると、総理自身が書いている」「米議会演説では泣いている上院議員もいた」とヨイショした。

首相は、「あとわずかの会期。国会に任せるが、どこかの段階では決めるときには決めなければならない。それが民主主義のルール」と強行採決を予告。番組出演者はこれに反論もせず、安倍首相が宮根氏に「今度一緒に大阪で食べに行きましょう」と誘い、日本テレビ政治部の青山和弘記者が「丁寧に説明すると言われている。(一部野党を)巻き込んでいってほしい。廃案になったら困るので」と言って、番組は終わった。

安倍首相が御用番組で元気を回復してクーデターを強行したのではないか。宮根、辛坊両氏と読売テレビは万死に値する。(次号に続く)

 

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